アディショナルタイムとは:意味・事例・決め方

アディショナルタイムを表した時計

こんにちは。今回は【アディショナルタイム】について、意味・事例・決め方・いつからこの呼び方になったかなどをご紹介します。

2018年の明治安田生命Jリーグ第33節、清水エスパルスvsヴィッセル神戸の後半アディショナルタイムが18分を超える(ATが18:50)という珍しい事が起きました。

そこで、改めて詳しくアディショナルタイムを解説しようと思った次第です。

サッカー初心者の方向けには上記の関連記事でアディショナルタイムについて簡単に解説していますので、「とりあえずアディショナルタイムの意味が知りたい」という方はそちらも合わせてご覧ください。

アディショナルタイムとは

アディショナルタイムとは競技が一時中断された時に、その空費された分を延長する時間のことです。

空費:(時間や労力が本来の目的とは異なり)無駄に使われること

アディショナルタイムは英語で「Additional Time」と書き、日本語に訳すと「追加時間」となります。「AT」と略して表記されることが多いです。

JFA(=日本サッカー協会)では英語表記でも「Additional Time」を使用するとしています。

なお他の英語での言い方としては、「Time Added On」「stoppage time」などがあります。海外のサイトではstoppage timeの表記を見ることが多いですね。

アディショナルタイムとロスタイムの違いは?いつから変更になった?

Jリーグでは2010年の7月より、FIFAの表記に合わせて呼び名をアディショナルタイムに統一し、テレビなどのメディアも徐々に対応しました。

それまでは長らくロスタイムという言い方がされましたが、ほぼ和製英語(「loss of time」の「of」が抜けたという説があります。また、帰国子女の友人に確認したところ、文法上は完全な間違いというわけでもないけど一般的に英語圏ではわざわざそのような言い方は使わないとのことでした)なため、意味は同じですが今はほとんど使われません。たまにテレビの解説者などが昔のクセでうっかり使ってしまうことがあるくらいでしょう。

また、2005年頃まではインジュリータイムという言い方を使うこともありましたが、injury(インジュリー)は負傷という意味なのでこちらも今は使われません。

JFAのサイトでも『「インジュリータイム」「Loss time」とは表記しない』と書かれています。

なおサッカーを話題にしている海外のサイトでは一部で「injury time」を使っている所もありました。

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アディショナルタイムの決め方は?

アディショナルタイムは以下のようなことで空費された時間を、前半・後半それぞれで追加します。

  • 競技者の交代
  • 負傷した競技者の負傷の程度の判断やフィールドからの退出
  • 時間の浪費
  • 懲戒の罰則
  • 競技会規定で認められる、飲水やその他医療上の理由による停止
  • プレーの再開を著しく遅らせる行為(例えば、得点の喜び)を含む、その他の理由
  • VARのチェックやレビューに関わる遅延

アディショナルタイムをどれだけ取るかは主審が決めます

腕時計のストップウォッチ機能で空費時間を計測して判断し、3審制(=主審1名・副審2)であれば第4審判に時間を伝えます。

第4審判は電光掲示板などでそれを選手やお互いのチーム関係者、観客がわかるように表示します。

小学生などの試合であれば、前後半それぞれの終了1~2分前くらいに指のジェスチャーなどで第4審判に合図します。それを受けた第4審判がそれぞれのチームの監督に何分かを伝えます。大会によっては「アディショナルタイムがない時は報告しなくて良い」などローカルルールもあるので事前の指導者打ち合わせの時などに確認するのが良いでしょう。

アディショナルタイムの表示方法について

例えばアディショナルタイムが「1分」と表示された場合、「1:00~1:59」までの時間を表しています。競技規則でも「第4審判は最小の時間を伝える」とあります。

アディショナルタイムの注意点

アディショナルタイムでは次の決まり事があるので主審を務める方は注意が必要です。

  • アディショナルタイムを増やすことはできるが減らすことはできない。
  • 前半に時間計測を間違えたとしても、主審は後半の時間の長さを変えることによって埋め合わせをしてはならない。

また、この後の事例にも関わってきますが、あくまで試合競技中(=前半と後半)に空費された時間を追加するのがアディショナルタイムです。

アディショナルタイム中に更に選手の負傷や乱闘などがあったとしても、そこでかかった時間は追加されません。計測を止めて競技の再開時に動かすだけです。

例えば、ATが3:15あったとして、3:00の時点で選手が負傷した場合、診断や治療に4分かかったとしても、その時間は加算せずに時計を止め、再開時に残りの0:15が経過した時点で試合終了となります。

アディショナルタイムの事例

さて、ここで冒頭でお伝えした「2018年の明治安田生命Jリーグ第33節、清水エスパルスvsヴィッセル神戸の後半アディショナルタイムが18分を超えた」という事例についてご紹介します。先ほど解説した「アディショナルタイム中に更に空費された時間があってもそれは追加しない」という規則を主審が誤ったためにこのような長時間になった珍しい例です。

清水vs神戸の後半アディショナルタイムが18分を超える

まずこの試合では後半ATは当初「4分」と表示されました。しかし、結果的にATは「18分50秒」になりました。

時系列は以下の通りです。

  • 89分頃:ATは4分と表示される(この時点でATは4:00~4:59)
  • 89分30秒:ヴィッセル神戸、16番 古橋 亨梧(ふるはし きょうご)→17番 ウェリントンに選手交代
  • 90分+AT3分15秒:神戸25番のDF大﨑選手が清水28番のDF立田選手へファウル。主審は取らない
  • 90分+AT3分19秒:神戸22番のDF橋本選手が清水17番のMF河合選手へファウル。主審は取らない
  • 90分+AT3分36秒:河合選手の出血などでプレー中断。4分ほど治療
  • 90分+AT8分01秒:プレー再開
  • 90分+AT8分41秒:神戸10番のMFポドルスキ選手が清水の立田選手にファウル。主審は取らない。立田選手は過呼吸を起こす。
  • 90分+AT8分55秒:清水3番のDFファン・ソッコ選手が神戸の大崎選手にファウル。主審は取らない。大崎選手は少し走った後に倒れ込む。
  • 両選手の治療
  • 90分+AT12分:プレー再開
  • 90分+AT13分30秒:清水13番のGK六反選手がCKからのヘディングゴールで3-3の同点に追いつく。
  • 90分+AT14分41秒:神戸17番のFWウェリントン選手が清水の選手にファウル。主審はイエローカードを提示。それまでのジャッジなどにウェリントン選手が不満を爆発させベンチで揉める。
  • 90分+AT17分14秒:ウェリントン選手が主審に抗議。2枚めのイエローカードで退場処分。
  • 90分+AT18分50秒:試合終了。

では何故このようなことが起こったのかを1つずつ見ていきましょう。

89分頃の選手交代で、20~30秒ほどかかりますが、これはATに加算されます。それでも最大でATが5分29秒を超えることはないはずです。

次にATが3:15の時点で神戸の大﨑 玲央(おおさき れお)選手が清水の立田 悠悟(たつた ゆうご)選手にファウルをしましたが、主審がこれを流しました。

更にAT3:19にも神戸の橋本 和(はしもと わたる)選手による清水の河井 陽介(かわい ようすけ)選手ファウルがありましたがこちらも流しました。しかし、こちらのファウルで河井選手が出血したためにAT3:36でプレーがストップされました。

ここで治療などで約4分ほど経過し、8:01に清水のFKでプレーが再開されました。

本来であれば4:00~4:59から3:36を引いた0:24~1:23(表示上ではAT8:25~9:24)が残りのATのはずです。

続いて8:41に神戸のポドルスキ選手が清水の立田選手にファウルし、これが流されました。立田選手は倒れたままで過呼吸のような状態でした。

その後8:55に清水のファン・ソッコ選手が神戸の大崎選手にファウルしました。大崎選手は、いったん立ち上がるものの少し走った先で倒れうずくまりました。

このようにいつまでも終わらないことに両チームの選手が苛立ち、ファウルが増えていきました。

それでも試合は終わらず、両方の選手の治療を終えた後、表示上では12:00からプレーが再開され、AT13分30秒に清水のGK六反選手がCKからのヘディングゴールで3-3の同点に追いつきます。

流石にこれで終わるだろうと、ポドルスキ選手もキックオフを大きく前方に蹴り出しますがそれでも終わらず、時系列で紹介したようなファウルや判定への不服で選手たちが揉め、結局、試合終了までにAT18分50秒という異例の事態になりました。

この件については、Jリーグ公式のYouTubeチャンネルの「Jリーグジャッジリプレイ」という動画にて検証もされています。

ファウルに対するジャッジにも難しいものがありましたが、やはりアディショナルタイム中に更に追加の時間を取ってしまったというのが問題だったと言えるでしょう。

アディショナルタイムの最長は?

AT18分50秒はかなりの時間ですが、もっと長い時間ATが取られた試合があります。

これが最長なのかは断言できませんが、サッカー情報サイト Qoly(外部サイト)によると、イングランドの下部リーグのクラブによるカップ戦「チェシャー・シニア・カップ」の準決勝、Macc(マックルズフィールド・タウン)vs Northwich Vics(ノースウィッチ・ビクトリア)戦で「ATが28分」という試合があったようです。

まとめとおさらい

では今回のまとめとおさらいです。

  • アディショナルタイム(AT)は「競技者の交代」「負傷した競技者の負傷の程度の判断やフィールドからの退出」「時間の浪費」「懲戒の罰則」「競技会規定で認められる、飲水やその他医療上の理由による停止」「プレーの再開を著しく遅らせる行為(例えば、得点の喜び)を含む、その他の理由」「VARのチェックやレビューに関わる遅延」で競技時間が空費された分を追加する時間のこと。
  • 前半45分・後半45分それぞれで追加する。
  • AT中、更に時間の空費があってもそれは追加しない。時計を止めるだけ。
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