ルール以外でPKについて:エピソード・心理戦・ABBA方式

PKのルールについて知りたい方は別に書いた下記の記事をご覧ください。

参考記事:PK、ペナルティマークからのキックについての細かいルール

こんにちは。いつもご覧いただきありがとうございます。

今回は【ルール以外でPKについて:エピソード・心理戦・ABBA方式】などをお話します。

サッカーのPK戦の画像

(画像:poxabayより引用)

具体的には「PKにまつわるエピソード」や「PKの時の選手の心理」「PKについての研究」「先攻有利説とABBA方式」をご紹介します。

経験したことがある選手であれば誰しも試合中の「PK(ペナルティキック)」、あるいは「ペナルティマークからのキック(PK戦)」における独特の雰囲気やプレッシャーを感じたことがあるでしょう。他のスポーツと比べて「1点の重み」が違うサッカーならではのPKについて掘り下げていきます。

PKはキッカーの誰かが必ず失敗して終わる

週刊少年サンデーで連載している「BE BLUES!〜青になれ〜」で、主人公の一条 龍のチームメイトである青梅 優人が大事な試合でPKを外してしまい、そのショックからしばらく立ち直れないエピソードがあります。その中で龍のこんな台詞があります。

だってPK戦は誰かが絶対失敗するんだから、
それが、優人の番だっただけで…
誰かのもとに必ずふりかかる!絶対に!
でなきゃ決着はつかないんだから

PK戦に突入したことはチーム全体の責任なんだから抱え込むだけムダだよって
オレ 優人に言ったんだよ。だからてっきり…

確かに主人公の言っていることはもっともで、自分が同じ立場でも似たような言葉で励ますでしょう。

しかしPKを外してしまった方はそう簡単に気持ちを切り替えることはできないものです。私自身にも経験がありますが、慰められれば慰められるほど申し訳ない気持ちや「何故自分が」という思い、自責の念などが強くなって余計に辛くなりました。

実際の試合におけるPKの最長記録は?

「PKはキッカーの誰かが必ず失敗して終わる」と述べましたが、では実際のところどれくらいPKが続いたのが最長か? と言うと、2016年6月4日にチェコの5部リーグ「SKバトフ1930 vs FCフリスターク」戦でギネス記録(2005年ナミビアンカップの両チーム合計48本)を超える【両チーム合計52本のキック】という記録が出ました。試合結果は26人目のキッカーが成功したSKバトフ1930が22-21で勝利しています。

 

プロ選手でもPKを蹴りたがらない選手は多い

プロのサッカー選手の中には「PK職人」と呼ばれる、PKに自信がある選手がある一方で、PKキッカーをやりたがらない選手も意外と多いです。特にヨーロッパでの主要な大会でPK戦になった時など、誰が蹴るかでもめている様子が時々見られます。

蹴る場面が大舞台であればあるほど決めた時よりも外した時の非難はすさまじく、毎試合何万人もの観客の前でプレーするスター選手であってもPKのプレッシャーは並大抵ではないということでしょうね。

 

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大事な場面でPKを決める選手・外す選手の傾向

一般的にPKは「入る確率が約8割」と言われキッカーが有利とされています。しかし相手GKとの心理戦、試合の疲労、観客の視線や声といったプレッシャーなど様々な要素が関わり、言われるほどキッカーが圧倒的有利とはなりません。

更にキーパーが名手であればあるほどキッカーへの重圧も増してきます。

「PK戦での決着はいつも残酷だが受け入れなくてはいけない。PKは簡単ではないんだ。ノイアーやブッフォンのような偉大なGKが守っている時はゴールが小さく見えるものだ」

by ジャンルカ・ヴィアッリ(元イタリア代表)

 

こういった状況の中、それでもPKを決める選手と外す選手の違いを一言で表すと「いかに普段と同じ状態でシュートを撃てるか」に尽きると思います。

相手GKを意識し過ぎるあまり、普段と違った助走をしたり得意ではない方向に蹴ったりすると大抵外れます。

また今までの経験上、何となく外しそうな選手の傾向としては以下の様なことが挙げられます。

・キックに向かう時にゴールを見ていない(うつむいている)

・不自然な笑みが出る(自分にも経験があります)

・ボールのセットに時間がかかる

 

PK戦の練習は細部にこだわって行うべき

「PK戦は運だから」と練習をしないチームもありますが、勝つ確率を1%でも上げたいのであれば当然PKについても練習をしておくべきです。

その際、ただ順番とキックの練習をするのではなく「細部にこだわった練習」をする方が良いです。

具体的には

・キャプテン同士のコイントス(1度目に勝った方がゴールを選べ、2度目に勝った方が先攻後攻を選べます)

・キッカー以外の選手はセンターサークル内で蹴る順番に並んで待機。

・この時にキッカーにかける言葉や雰囲気作りの予行GK(ゴールキーパー)の待機場所の確認

「キッカー側のゴールキーパーは、フィールドの中でキックの行われているペナルティーエリアの外で、ゴールラインとペナルティーエリアの境界線との交点のゴールライン上にいなければならない」(競技規則より)

などが挙げられます。

 

「PK戦においてはセンターサークルで自分の番を待つ時に選手が一番緊張する」というノルウェーの研究報告もあります。やはり実践を意識した雰囲気の中で練習を行うことが、本番の時の緊張感をいくらか和らげることにつながります。

余談ですが、私の教え子で合宿時にPKを初めて経験した小学校低学年の子がいましたが、プレッシャーに耐えきれず泣いてしまいキックを外しました。その後の彼にとっては良い経験だったと思いますが、練習の内からやっておけばよかったなと後悔もした出来事でした。

 

PKの成功確率が一番高いのは「真ん中x高め」!?

pkでのゴールキーパーの写真

(画像:poxabayより引用)

一般的にはサイドネットに突き刺さるような「サイド」且つ「高め」のコースがキーパーにとっては取りづらいとされています。ただ、「ゴールの成功率」で考えると実は「真ん中」且つ「高め」を狙うのが一番高いというデータがあります。

 

「0ベース思考」という本によるとキッカーが右利きの場合、キーパーが左に飛ぶ確率は57%で右に飛ぶ確率は41%、サイドより真ん中を狙った方が7%も成功率が上がるとしています。これは2015年頃に話題になった本ですが、2017年現在、プレミアリーグでの調査でも同様の結果が出ています。

 

スポーツデータを扱う会社「Opta」がプレミアリーグ7シーズンのPKを調査した所、「真ん中」且つ「高め」に蹴った場合の成功率はなんと97%という驚くべき結果が出ました。

 

もし止められたら「読み合いに負けて恰好悪い」「仮にキーパーが左右に飛んでも残った足で防がれそう」などのイメージから真ん中に蹴るのは勇気がいることですし、「高め」に蹴るのはスキルを要しますが、少なくとも左右に蹴るよりは枠を外す可能性は減りそうですし練習の価値はあるのではないでしょうか。

 

PKの先攻有利説とABBA(アバ)方式とは

こちらに関してはルールになっていまいますがご紹介します。

いまPK戦に関して「ABBA(アバ)方式」という新たな方法が取り入れられつつあるのをご存じでしょうか?

従来の両チームが交互に行うPK戦では先攻チームが有利(勝率約60%)と公平性に欠けるとの指摘がありました。これは先に決められたことによるプレッシャーがより後攻にかかるためです。

そこで、先攻Aチームの後に、後攻Bチームが2回続けて蹴る ABBA方式の導入が検討され、既に女子U17欧州選手権やU20W杯でも試験的に行われています。まだデータを集めている段階ですが将来的にはルールが変更されるかもしれません。

 

ルール以外でPKについてのあれこれ:まとめ

PKと言えばロベルト・バッジョ(元イタリア代表・バロンドーラー)の言葉が有名ですね。

「PKを決めても誰も覚えていないが外したら誰もが忘れない」

「PKを外すことができるのはPKを蹴る勇気を持った者だけだ」

「決めて当たり前」とサポーターが期待する中でキッカーを務めることのプレッシャーを感じさせる名言ですね。

また、マルチェロ・リッピ(元ユベントス・イタリア代表監督、現中国代表監督)の言った言葉に次の様なものがあります。

PKを蹴ることを恐れれば必ず負ける。だが全員が蹴ることを望めば勝てるんだ

上に述べた様に、プロのスター選手でも重大な場面では慄いて(おののいて)しまいがちですが、そこを恐れずチャレンジできるかどうかが勝負の分かれ道ということでしょう。事実、リッピ監督が自分の選手たちにこの言葉を言ったドイツW杯でのPK戦で、見事イタリア代表を優勝に導いています。

 

もしこれを読んでくれているあなたが選手・もしくは監督の立場だったとしたら、是非チームPK戦を制することができる様に、これらのことを踏まえながら普段の練習や声掛けなどを心がけてほしいです。

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