サッカーで勝つために「ベテラン」や「経験」が必要な理由

サッカーに関わる人々のイメージ

今回はサッカーにおける「ベテラン」や「経験」についての話をお伝えしたいと思います。

 

昔、アルゼンチン代表の監督(申し訳ありません。はっきりとはわかりません。パサレラ監督だったでしょうか)が、

『代表監督というものは常に民衆の評価・支持率が変わるものだ。就任した直後は期待を込めて100%。しかし1戦目を終えた後は80%。次に代表メンバーを発表した後は「どうしてあの選手を入れないんだ」と60%になる。』

という趣旨の発言をしていました。

これはサッカーに限らずですが、代表メンバーが発表される度に賛否両論されるのは常です。

100人いれば100通りの考え方があります。ただ共通して言えることは、優秀な監督ほどベテランだったり他の選手には無い経験を持っている選手の重要性を理解しているということです。




山口蛍選手の劇的逆転ゴールで日本中が沸く中、冷静だった長谷部選手・酒井宏樹選手

2016年10月6日。ロシアW杯最終予選でサッカー日本代表はイラク代表と対戦し、2-1で勝利を収めました。

この試合で、試合終了間際のアディショナルタイムに山口蛍選手が決めた劇的なゴールが話題になりましたが、その裏側で注目すべき行動を取った選手がいます。

それがキャプテンのMF長谷部誠選手とDF酒井宏樹選手です。

 

山口選手のゴール直後、1人センターサークルに立つ長谷部選手

ほとんどの日本代表選手がベンチに向かいゴールの喜びに酔いしれる中、1人センターサークルに向かったのが長谷部選手です。この行動はツイッターなど一部でも注目されました。

それは何故でしょうか?

キックオフはそれぞれのチームが自陣のコートにいる状態で開始される

試合開始・再開の時に行われるキックオフは両チームがそれぞれ全員自陣にいる状態で行われます。

ですので、ベンチ近くに選手たちがいる間はイラク側はキックオフができません。

「だったら長谷部選手の行動は意味が無いんじゃないか?」と思うかもしれません。そういった風に取り上げていたサイトもありました。

しかし、日本の選手たちが喜んだ場所がイラク側でした。この半ば浮かれ気分のまま、うっかり全員が自陣に入った瞬間にイラクがキックオフを開始したらどうでしょうか

ロシアW杯最終予選イラク対日本

確率としては高くないでしょうが0とは言い切れません。万が一に備え長谷部選手はセンターサークルに立ったんですね。

これはまさに数多くの試合を戦ってきた「経験」がある「ベテラン」ゆえの行動ではないでしょうか。

実際にすぐキックオフを行おうとしたチームはあるの?

私の記憶が確かならば、トヨタカップ(現 FIFAクラブワールドカップ)でのユベントスvsリーベル・プレートで、デルピエロ選手に決められた直後にリーベル・プレート側がユベントス側の油断をつきキックオフをしようとしました。

これはユベントス側の準備が整っていないと主審が判断しやり直しになりましたが、この様に相手の油断をつこうとするのは闘い慣れたチームであればどこも考えることです。

ちなみにサッカーで、ずる賢いプレーのことを「マリーシア」と呼びます。特に南米などでは当たり前とされていますね。

すぐにキックオフをした実例がJリーグでありました

2017年8月19日追記

まさにピッタリな状況をFacebookから見つけました。

Jリーグ公式の動画です。1993年の6月9日、浦和レッズvs鹿島アントラーズで福田選手(浦和)のゴールで歓喜している浦和の選手たちのスキを突いてキックオフした鹿島があっという間に同点ゴール!

ひょっとしたら長谷部選手はこの試合のことを知っていたのかも?

 

ザバスのプロテイン ココア味1050g

【PR】ホエイプロテイン100 ココア風味 1050g

XEBIOで見る

Amazonで見る

歓喜の輪にあえて加わらなかった酒井選手

さて、もう一人冷静に「次」を考えていたのが酒井宏樹選手です。

こちらは特に目立った行動をしていないので話題になったりはしていませんが、本人が後のインタビューで「まだ試合が終わってなかったし、これで失点するわけにはいかなかったので、輪には加わらずすぐにポジションに戻った」と話しています。

 

いずれも「経験」からくる行動

長谷部選手・酒井選手、どちらの行動も今までの経験が活きた行動だと思います。

特にW杯予選・本番の様な、負ければ後がなくなる可能性がある戦いというのはちょっとしたことが致命的なミスになりかねません。

サッカーというのはただサッカーの技術に秀でた選手を11名ピッチに送り込めば勝てるスポーツではありません。

 

かつて、フランス代表は

  • 「イタリア セリエA得点王:トレゼゲ」
  • 「フランス リーグアン得点王:シセ」
  • 「イングランド プレミアリーグ得点王アンリ」

という、トップレベルのリーグ得点王を3人も揃えながら日韓W杯でまさかの1得点も挙げられないまま0勝1分2敗で敗退した経験があります(ちなみに前回のW杯で優勝しています)。

この時はチームの要であったジダン選手(2016年11月現在、レアルマドリードの監督)を直前に負傷で欠いてしまうというアクシデントにも見舞われていました。

彼の欠場が全ての原因ではないでしょうが、前回優勝経験を持った当時30歳のベテラン選手の不在は間違いなくチームに影響しました。

 

サッカーは人間が行うものなのでミスがつきもの

サッカーは常に新しいことが起こるスポーツです。言ってみれば不測の事態の連続と言えるでしょう。そして必ずミスが起こるスポーツです。

緊張や疲労から判断を間違うこともあります。気づかぬうちに冷静さを欠いてしまいます。こういった時に適切な対処を行えるのが、多くの経験を積んだベテランや、他のメンバーが体験したことのない経験を持った選手です。

 

例え実力や才能が高くてもそれを常に100%発揮できるとは限らないのです。

経験がある選手ほど、自分の能力をできるだけ高く出せる術に長けています。

時に批判にさらされても日本代表で海外組が優遇される理由はここにあります。

 

また、経験が求められるのは選手だけではありません。選手の環境を整えるスタッフにもそれが求められます。

例えばブラジルW杯では暑さ対策が全くできず、選手のコンディション不良が露呈したため日本代表スタッフが批判の的になりました。

ブラジルW杯以前にも、現地で満足な食材が手に入らずコンディション調整に苦しんだ時期もあります。

チームが勝つためには様々な要素で高いパフォーマンスを出すことが求められるのです。

 

「経験」を次につなげる意識を持っている選手は成長する

これらの話はプロ選手に限ったことではありません。

日々サッカーに勤しむ全国の子供から大人まで、全ての人にその人なりの経験があります。

そこでの経験を常に活かそうと考えているかどうかがポイントです。

例えば試合に負けた時、「あー負けちゃったー」と感傷に浸っているだけではまた同じミスを繰り返してしまう選手になってしまうかもしれません。

・「何が原因か」

・「改善する方法は」

・「良かったところはどこか」

常に自身が体験・経験したことを踏まえて改善を図ろうとする選手が最も成長する選手です。

 

P.S. ベテラン(Veteran)本来の意味は「退役軍人」です。英語圏の人との会話に使う時は「expert」「seasoned」などを使う様です。




 

コメント