こんにちは。今回はろう者サッカー(=デフサッカー)について、北海道ろう者サッカー協会の技術委員長である木村 亮太さんに取材させて頂いた内容をお伝えします。
2020年東京オリンピック・パラリンピックの開催などにより、ブラインドサッカー(5人制サッカー)の知名度や注目度は高まっていますが、ろう者サッカーに関しては馴染みが薄い方も多いのではないでしょうか。
そこで、選手としてもプレーしつつ協会のお仕事にも携わる木村さんに色々と教えて頂いたことをご紹介します。
これを機会にろう者サッカーを知らない方にも興味を持ってもらえれば幸いです。
ろう者サッカーとは
ろう者サッカーとは聴覚障がい者によるサッカーのことです。
deaf(読み方:デフ。意味:耳が不自由な・聴覚障がいの)という英語からデフサッカーとも言います。
日本での ろう者サッカーの概要
続いて日本におけるろう者サッカーはどういう活動をしているのかなど、概要として以下のことをお伝えします。
- ろう者サッカーの組織について
- ろう者サッカーの試合や大会について
ろう者サッカーの組織について
日本のろう者サッカーはJDFA(Japan Deaf Football Association):一般社団法人 日本ろう者サッカー協会が取りまとめています。
違いはDeafとDreamだけなので間違えないよう注意
JDFAにはブロックごとの協会が加盟しています。
2019年時点で加盟している協会は次の通りです(リンク先は公式のFacebookページです)。
- HDFA(北海道ろう者サッカー協会) :北海道
- EJDFA(東日本ろう者サッカー協会):茨城、埼玉、千葉、東京、神奈川
- WJDFA(西日本ろう者サッカー協会):大阪、愛知など
- KDFA(山口、九州ろう者サッカー協会):山口、福岡など
その他の地域は年度によって、加盟したり人数不足などによる休部や脱退をしたりといったことがあります。
各協会はHPやSNS(Facebookやアメブロ、インスタグラムなど)によって大会・イベント・理事の会議といった活動の様子を情報発信しています。
ろう者サッカーの試合や大会について
国内での大きな大会としては次の3つがあります。
- 全国ろうあ体育大会(サッカー):2019年は9/21~22に鳥取で行われる予定です
- 全日本ろう者サッカー選手権大会:2019年は10/26~27に札幌で行われる予定です
- 全日本ろう者フットサル選手権大会
海外との試合としては次の国際大会があります。
- アジア太平洋ろう者サッカー選手権大会
- アジア太平洋ろう者競技大会:サッカー、フットサル
- 世界ろう者フットサル選手権大会
- 世界ろう者サッカー選手権大会
- 夏季デフリンピック(サッカー):2025年の日本開催に向けて招致活動中とのことです。
その他、各地区で大会を行ったり、健常者や他の障がい者と交流試合を行ったりしています。
ろう者サッカーのルール
実はろう者サッカーのルールは次の通り、基本的には健常者のルールと変わりません。
- ろう者サッカー:11人制で45分ハーフ
- ろう者フットサル:5人制で20分のプレーイングタイムか、25分のランニングタイム
- 聴力のレベルによってろう者サッカー、ろう者フットサルの選手の対象になります:聴力レベルに関してはJFA(=日本サッカー協会)のHPに詳しい記載があります。
ただし、耳が聞こえづらいことで、ろう者サッカーと健常者のサッカーには次のような違いがあります。
ろう者サッカーの選手について
ろう者サッカーの選手は補聴器を外すことが義務付けられています。
このため、健常者のサッカーのように味方選手やベンチからの声の指示や、あるいは相手選手の足音などがわからないため、「相手・味方・ボール・ゴール・ベンチからの指示・審判」といった情報を、選手同士でアイコンタクトによる意思の疎通を図ったり、絶えず首を振って周りを見たりしながら集めなければなりません。
ベンチからの指示は手話がほとんどなので、常にベンチを意識してみないといつ指示されているかわからないとのことでした。
また、死角から相手選手が来ることもあるため、恐怖感があります。
木村さんは、健常者の方にろう者サッカーを体験してもらいアンケートを取ったことがあるのですが、『怖さを感じた』という回答が多かったそうです。
ろう者サッカーの審判について
ろう者サッカーの選手は音での判断が難しいため、健常者サッカーとは次の2つの違いがあります。
- 主審も旗を持つ
- ゴール裏に1人以上の旗を持った審判員を配置する
図のように視覚での合図で判定を知らせます。
ろう者サッカーを始めるには?
もし、ろう者の方で新たにろう者サッカーを始めたいと思った場合は、ツテがなくても協会に問い合わせれば良いとのことでした。
ろう者サッカーの課題とは?
木村さんに課題と感じることを伺った所、次のようなことを教えてくれました。
- 選手人数の不足
- 認知度がまだ低い
人数不足の理由は主に2つあり、1つは就職のため道外に行く選手が多いこと、2つ目は北海道が広いため選手が集まりづらいことです。
このため、皆が集まれる練習場所がないので、他の障がい者の方や健常者と練習や交流試合をしているのが現状です。
次に認知度に関してですが、ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、実は日本には7つの障がい者サッカーがあります。
- アンプティサッカー:切断障がいのある選手による7人制サッカー
- CPサッカー:脳性麻痺による運動障がいを持った選手による7人制サッカー
- ソーシャルフットボール:精神障がいのある選手によるフットサル(国内のローカルルールでは女子を含む場合に6人制など一部違いがあります)
- 知的障がい者サッカー:知的障がいのある選手による11人制サッカー
- 電動車いすサッカー(パワーチェアーフットボール):重度障がい者などによるサッカー
- ブラインドサッカー:視覚障がい者による5人制サッカー
- ろう者サッカー(デフサッカー):聴覚障がい者による11人制サッカー
2016年にJIFF(Japan Inclusive Football Federation:一般社団法人 日本障がい者サッカー連盟)が設立され、北澤豪さんを会長としてこれら7つの協会を加盟団体としてまとめました。
代表チームのユニフォームの統一や、意見交換、各サッカーの発展に向けた企画や取り組みが行われるようになり、障がい者サッカーとしての認知度は少しづつ高まっていますが、地域での認知度はまだまだこれからだと感じるとのことでした。
HDFA(北海道ろう者サッカー協会)について
今回取材させていただいた木村さんが所属しているのがHDFA(Hokkaido Deaf Football Association:北海道ろう者サッカー協会)です。
実は北海道はデフサッカー発祥の地として知られています。
また、JDFAやHDFAのロゴに使われているのはタツノオトシゴなのですが、ろうあのシンボルとしてタツノオトシゴが使われていることはご存知でしょうか?
日本古来の伝説では、龍は耳の聞こえが悪かったこと、その耳が海に落ちるとタツノオトシゴになるという言い伝えがあり、これに由来して全国ろうあ連盟がロゴやマスコットとしました。
また、タツノオトシゴの形が耳に似ていることもポイントだったそうです。
ろう者の「ろう」には「聾」という漢字が使われるのも、これにちなんだものとされています。
まとめ
木村さんに、ろう者サッカーの今後の展望をお聞きした所、2つのことを仰っていました。
- インクルーシブサッカーの実現
- サッカーを通じて様々なことを知ってもらいたい
インクルーシブとは「包括的な」という意味の英語で、障がい者が精神面・肉体面ともに最大限の能力を発揮し、自由な社会に参加することを意味します。
つまり、インクルーシブサッカーとは障がい関係なくサッカーを楽しめる環境のことです。
そうしたサッカーの実現が、障がいへの理解や共生社会の実現にもつながっていくということをお話してくれました。
今回は筆談とパソコンを使っての取材でしたが、1つ1つ丁寧かつ親身に色々な話を教えていただけ感謝です。
この記事が少しでも認知度の向上や環境の改善に役立てば幸いです。
コメント
ソーシャルフットボールとしては11人制サッカーは開催したことはJSFA(日本ソーシャルフットボール協会)としてはありません。行なっているのはフットサルになります。(女性が出場すると6人でプレー出来るのは国内ローカルルールであり、国際ルールではありません)
キーさま
情報提供ありがとうございます!
訂正しました。